NCAP (New Car Assessment Program)

NCAPとは?

NCAP (New Car Assessment Program) は、新車の安全性能を評価するためのプロトコルです。このプログラムは、消費者が車両を購入する際に安全性を考慮できるように、車両の安全性能を客観的に評価し、結果を公表します。これにより、消費者は安全性の高い車両を選択するための重要な情報を得ることができ、自動車メーカーや部品サプライヤーに対しては安全技術の開発と導入を促す動機を提供します。

新車の安全性能を評価するためのプロトコル

世界中には各国・地域の交通事情に合わせたNCAPが存在します。代表例は以下の通りです。

  • Euro NCAP:欧州で販売されている新型車に対して評価されているアセスメント。各シナリオの達成可否に基づいて点数が与えられ、その点数に従って0~5の星 (five-star safety rating system) が与えられる。
  • JNCAP:日本で販売されている新型車に対して評価されているアセスメント。Euro NCAPと同様に各評価シナリオ可否に基づき点数が与えられ、点数に従いA~Eの5段階で星が与えられる。
  • NHTSA NCAP (U.S. NCAP):米国道路交通安全局にて評価されているアセスメント。新車の安全性能評価を行い、消費者向けにその評価結果を公表している。
  • IIHS HLDI:米国保険業者協会高速道路安全性能評価にて評価されているアセスメント。各評価シナリオに基づき取得した点数が高ければTOP SAFETY PICK+/TOP SAFETY PICKに選ばれ、IIHS HLDIのウェブサイトで公開される。

特にEuro NCAPはその詳細な評価基準と厳格なテストプロトコルで広く認知されており、本記事ではEuro NCAPを主軸として説明します。Euro NCAPの評価は、以下の4つの主要カテゴリーに分かれています:

  • 成人乗員保護:このカテゴリーでは、事故時の成人乗員の保護性能を評価します。具体的には、前面衝突や側面衝突時の乗員に対する衝撃の吸収能力や、エアバッグの効果、シートベルトの性能などが評価されます。例えば、正面衝突テストでは、ダミー人形を使用して衝突時の頭部や胸部への衝撃を測定し、車両の構造がどの程度衝撃を吸収できるかを確認します。
  • 子供乗員保護:チャイルドシートの有効性や、事故時の子供の安全性を評価します。これには、チャイルドシートの取り付けや使いやすさ、事故時の保護性能が含まれます。適切なチャイルドシートの使用は、子供の安全を確保するために不可欠です。実際のテストでは、様々なサイズのチャイルドダミーを使用し、異なる衝突条件下での安全性を確認します。
  • 交通弱者保護 (VRU protection):歩行者やサイクリスト、モーターサイクリストに対する保護性能を評価します。車両のフロントデザインや衝突時のエネルギー吸収性能が、これらの道路利用者の安全にどのように寄与するかが評価されます。例えば、歩行者保護テストでは、車両のボンネットやバンパーが歩行者に与える衝撃を測定し、怪我のリスクを軽減するための設計がされているかを評価します。加えて、道路利用者に対する自動緊急ブレーキ性能も評価されます。
  • 安全支援技術 (Safety Assist):車両に搭載されたADAS (先進運転支援システム)の評価を行います。特に、AEB (自動緊急ブレーキ) 、ACC (アダプティブクルーズコントロール) 、LKAS (レーンキープアシストシステム) などの技術が含まれます。これらの技術は、事故の防止や衝突の緩和に重要な役割を果たします。例えば、AEBシステムは、前方の障害物を検知し、運転者が適切に反応しない場合に自動的にブレーキを作動させることで、衝突を回避または軽減します。

特に交通弱者保護 (VRU protection)安全支援技術 (Safety Assist) がADASに関連するカテゴリーです。Euro NCAPは、これらの評価を通じて、消費者に対して安全性の高い車両を選ぶための情報を提供し、自動車メーカーに対しては安全技術の開発と導入を促す役割を担っています。また、評価基準は時代とともに進化しており、最新の技術や安全基準に対応するために定期的に見直され、更新されています。これにより、Euro NCAPは世界中の自動車メーカーにとって、安全性向上のための重要な指標となっており、現代の交通環境における安全性の向上に寄与しています。

交差点での車両同士の右直事故シナリオをRoadRunnerとSimulinkで連成シミュレーションした際のスクリーンショット。交差点を走行する2台の車両が表示され、各車両の速度や経路、センサー検出範囲などが可視化されている。下段ではアクションブロックとコンディションブロックで構成されたイベントドリブンなシナリオを可視化している。Euro NCAP CCFtap試験の一例を視覚的に表現している

図1. Euro NCAP CCFtap (Car-to-Car Front turn-across-path) シナリオのシミュレーション

交差点での車両同士の右直事故シナリオをRoadRunnerとSimulinkで連成シミュレーションした際のスクリーンショット。Euro NCAP CCFtapで規定される自車両(青色)と対向車両(赤色)の各軌跡と、車両状態やシナリオパラメータが一覧表示され、Euro NCAP CCFtap試験のシミュレーションを行うために必要なシナリオ構成を視覚的に表現している。

図2. Euro NCAP CCFtap (Car-to-Car Front turn-across-path) シナリオの設計例

NCAPの重要性

NCAPは、消費者が車両の安全性を評価し、購入の際に安全性を考慮できるようにするための重要なプログラムです。特に、Euro NCAPはヨーロッパでの自動車安全基準を大幅に向上させ、また、その他各地域のNCAPもEuro NCAPを参考にプロトコルが設定されているため特に重要なプロトコルとなっています。以下にその重要性を示します。

  1. 消費者の安全意識向上: Euro NCAPは車両の安全性能を「星評価」として公表することで、消費者が安全性を重視して車両を選ぶことを促進しています。これにより、消費者は自身と家族の安全を確保するための情報を得ることができ、より安全な選択をすることが可能になります。特に、事故発生時の衝撃吸収能力や、衝突回避システムの有無などが評価されることで、消費者は具体的な安全性能を理解しやすくなります。
  2. 自動車メーカーへの影響: NCAPの評価は自動車メーカーにとっても大きな影響を与えています。高評価を獲得することは、メーカーにとって製品の安全性をアピールし、市場での競争力を高めるための重要な要素です。これにより、メーカーは安全技術の研究開発に力を入れるようになり、新しい安全技術が次々と導入されるようになっています。たとえば、AEB (自動緊急ブレーキ) やACC (アダプティブクルーズコントロール) などの先進運転支援システム(ADAS)は、NCAPの評価基準に組み込まれることで、多くの車両に標準装備されるようになりました。また、新規検討されているプロトコルは自動車メーカーの開発目標になっています。
  3. 交通事故の減少: NCAPの評価により、車両の安全性能が向上することで、交通事故の発生率やその深刻度が減少しています。特に、歩行者やサイクリストなどの脆弱な道路利用者に対する保護性能が評価されることで、これらの利用者の安全性も向上しています。Euro NCAPのテストは、実際の事故統計データに基づいているため現実の事故減少に寄与します。
  4. プロトコルの進化と適応: Euro NCAPは、最新の技術進化や交通環境の変化に対応するために、評価基準を定期的に見直し、更新しています。これにより、常に現代の交通環境における安全性の向上に寄与しています。

以上のように、NCAPは消費者の選択肢を広げ、安全性を重視した車両選びをサポートするだけでなく、自動車メーカーにとっても安全技術の導入を促進する重要な役割を果たしています。これにより、全体的な交通安全の向上に大きく貢献しています。

シミュレーション活用の必要性

シミュレーション技術の活用は、現代の自動車開発において不可欠な要素となっています。現実に起きうるあらゆるシチュエーションに備えるのはもちろんのこと、NCAPの限られたシナリオにおいてもシミュレーション活用なしでは評価しきれないほど評価パターンは膨大になってきています。下記にシミュレーション活用が必要になっている理由をまとめます。

定義されているシナリオへの対応

定義されているシナリオのみであってもシナリオ数は膨大であり、そのすべての現実世界での実車テストで行うためには膨大な時間が必要です。2024年においてHMIを除くADAS関連のEuro NCAPの試験数は36シナリオ、481パターン※にもなります。 (※ここで、パターンは各シナリオにおいて車速違いなどのシナリオパラメータ違いをカウント)

Euro NCAPの評価体系を示す図。上位にEuro NCAP(36テスト/481バリアント)があり、下位に「Safety Assist Tests」と「Vulnerable Road User(VRU)protection」の2分類。その下にAEB Car2Car、Lane Support、AEB Pedestrian、AEB Cyclist、AEB Motorcyclistが細分化されている。各項目にテスト数とバリアント数が記載されている。

図3. シナリオ、テストパターンと分類

バリエーションへの対応

  1. 各シナリオに許容されている誤差によるバリエーション: Euro NCAPでは各シナリオにおいて車速誤差や、基準軌跡に対する縦位置誤差と横位置誤差、テスト車両と相手車両の相対位置誤差、またヨー角速度やステアリングホイール角速度誤差などの許容値が定義されています。当然シミュレーションであればこれらを誤差なく完全に合わせるようにコントロールすることができますが、実車試験の際は値がばらつきます。許容誤差内であれば試験結果として認められますので、各値が開発中のADAS機能にとって不利な側にばらついたとしても試験を満たせるようADASシステムを設計することが理想です。誤差の要因は先ほどリストしている通り多くありますので、これらの組み合わせとなると数が膨大になります。
EuroNCAPで定められる許容誤差の例として2台の車両(VUTとGVT)の挙動と誤差を示した表と図。上段は直線走行時、下段はカーブ走行時の車両間の横方向誤差の定義や進路(赤色)の車両基準点(黄色)を示している。実際の車両試験では誤差が生じ、その誤差がどこまで許容できるのかを視覚的に説明している。シミュレーションでは許容誤差を含めた多くの検証が必要であることを説明するために使用している図。

図4. 許容誤差の例

  1. 車種違いによるバリエーション: ADASシステムの開発者が意識しなければいけないバリエーションは試験環境だけでなく、試験車両の違いも含まれます。搭載するシステムが同一であった場合であっても、カメラなどセンサの取付位置が異なれば当然センサ計測値が異なってくるため車種ごとに違いが生まれます。取付位置の高さや角度だけでなく、エンジンフードの長さによっては路面の見切れる位置が異なってきますし、車両重量やサスペンションの仕組みも異なってきます。これらの違いによって期待通りに動かない試験パターンがないように検証を行う場合、車種数だけでも検証パターン数が多くなることは容易に想像されます。
RoadRunnerで作成した車種バリエーションの例。道路上にさまざまな車種が並んでいる。左からコンパクトカー、ピックアップトラック、セダン、スポーツカー、バン、SUVなど、色や形が異なる複数の車両が一列に配置されており、車種のバリエーションを示している。

図5. 車種バリエーションの例

  1. 同一車種内でのバリエーション: 同一車種の中でもバリエーションを振り、パラメータ違いでのロバスト性を検証したいケースがあります。 例えば、積載量について重量について軽い場合と重い場合で自動ブレーキ作動後の制動距離が異なります。同じ重量であっても、前軸重量が重いのか、後軸重量が重いのかでは制動距離やブレーキによるピッチダイブ量も異なってきますし、操舵系においてはヨー慣性モーメントも異なります。他にもタイヤ違い、Conv, HEV, BEV等の駆動系の違いもADAS性能に影響を与えます。これらのバリエーションの組み合わせは無数に考えることが可能です。
  2. 外部環境のバリエーション: NCAPのテストシーンの障害物の配置やレーンマーキング、照度の上下限は規定されているとはいえ、その他にもシーンの背景の映り込みや太陽の角度、明るさについては自由度が残されています。これらのバリエーションを確かめ、問題なく認識アルゴリズムが働き、期待通りの性能が出るかを検証する必要があります。

新規システムの検討

新規システムを検討するにあたり、例えば、どのセンサを使用するか、センサの計測解像度は旧システムに対してどこまでアップグレードするべきか、どこに何台搭載することがコストと性能面で効率的か、といった項目を検討するためには実機よりもシミュレーションが有効です。わざわざそれぞれの実機プロトタイプ作成やその取り付けを行うことなく、ある程度のあたり付けを行うことが可能です。

以上の理由から、シミュレーション技術の活用は、膨大になる試験数や実機がない状態での効率的な検討に非常に重要です

MATLAB、SimulinkによるNCAPシミュレーション

MATLAB®とSimulink®製品はADAS・自動運転システムをシミュレーションするための機能とワークフローを提供しています。Automated Driving Toolbox™とサポートパッケージ (Automated Driving Toolbox Test Suite for Euro NCAP Protocols) は、Euro NCAPの安全支援技術 (Safety Assist) のシミュレーションに必要な次の機能を有しています。

  1. Euro ECAPシナリオとバリエーションの生成
  2. Simulinkによる安全支援技術のシミュレーション
  3. 結果の自動評価およびレポート生成定義されているシナリオへの対応
Automated Driving ToolboxによるEuro NCAPシミュレーションワークフローの例としてEuro NCAPプロトコルのテストスイートサポートパッケージの概要を簡単に説明した図。左から、各種Euro NCAPシナリオ生成、Simulinkによる車両・制御・シナリオを含めたシミュレーションの実施、最後に自動評価と結果のレポート生成の流れが矢印で示されている。

図6. Automated Driving ToolboxによるEuro NCAPシミュレーションワークフローの例

Euro NCAPシナリオとバリエーションの生成機能

Automated Driving ToolboxではEuro ECAPシナリオのパターンをあらかじめ準備しています。シナリオの条件やパラメータ、車種等のバリエーションを変更可能な拡張性も有しています。実車で実施できる試験数には限りがありますが、シミュレーションでは再現性のあるより多くの試験を実施できます。Euro NCAPで規定されるシナリオに加え、ユーザーは許容誤差や独自のパラメータ設定を組み合わせたシナリオも手早く準備することができ、開発したシステムのロバスト性を机上で効率よく検証できます。

また、RoadRunnerRoadRunner Scenario製品を利用することで、生成したシナリオをOpenDRIVEおよびOpenSCENARIO形式でエクスポートし、様々なシミュレーターでご活用いただけます。

図7. Euro NCAPシナリオ生成機能とRoadRunner Scenarioによるシナリオの確認

表データのパラメータからMATLAB(Automated Driving Toolbox)を用いてシナリオバリエーションを自動生成している様子を示している。左側にExcelの表データが表示され、各行に車両テストシナリオのパラメータ(速度、寸法、経路、衝突情報など)が入力されている。右側には、そのデータから自動生成された複数のシナリオバリエーションの可視化結果が並んでいる。

図8. 表データのパラメータからシナリオバリエーションを自動生成

Simulinkによる安全支援技術のシミュレーション

次のステップでは、準備したEuro NCAPシナリオを使いADAS・自動運転システムのシミュレーションを実施します。クローズドループなシミュレーションを実施するためには対象となる安全支援システムに加えて、「シナリオとのインターフェイス」「センサモデル」「車両モデル」の準備も必要になります。MATLAB, Simulinkはこれらのコンポーネントに必要な機能や専用のSimulinkブロックを各種Toolboxで提供しています。またリファレンスとしてすぐにお使いいただける例題も複数用意しています。

SimulinkによるAEB(自動緊急ブレーキ)シミュレーションの構築例を示す図です。中央にAEBテストベンチがあり、「コントローラ」「車両」「シナリオ」に分かれています。左にAEB制御部、下に14自由度の車両モデル、右にシナリオインターフェイスとセンサモデルが接続されています。

図9. SimulinkのAEBシミュレーション構築例

シナリオとのインターフェイス

SimulinkはRoadRunner Scenarioとのシミュレーションインターフェイスを有しておりコシミュレーションを実現できます。Automated Driving Toolboxで提供される専用のSimulinkブロックを使うことで、接続したRoadRunner Scenarioから各アクターの位置や車線情報等を取得でき、自車両の挙動もSimulink側から制御できます。この仕組みを利用し、定義したシナリオ内でクローズドループなADAS・自動運転システムのシミュレーション環境を構築できます。

SimulinkとRoadRunner Scenarioのコシミュレーション構成図。左側はセンサーやアクター、トラッカー、意思決定ロジック、コントローラー、ダイナミクスの各ブロックが連携するSimulinkモデル。右側は交差点を走行する車両と、各種シミュレーションメーターやグラフが表示されたNCAPのシミュレーションをRoadRunner Scenarioで可視化したスクリーンショット。

図10. SimulinkとRoadRunner Scenarioのコシミュレーション

センサモデル

Automated Driving Toolboxにはカメラ、RadarLidar、超音波センサ等の複数のセンサモデルを用意しており、取付位置などの各種パラメータを任意に設定できます。センサモデルの粒度も、「確率的センサモデル(真値にセンサの特徴を加味した確率的な誤差を付与)」と「Unreal Engine連携センサモデル (Unreal Engine環境から画像や点群データを生成) 」から選択することができます。

  • 確率的なセンサモデルは検出結果を直接出力します。認識モデルを必要としないため、ユーザーは物体検出後のフュージョン・トラッキング、判断、制御のアルゴリズム開発と検証に注力する事ができます。FOV等のパラメータも簡単に調整できるため、センサ取付位置や必要な性能とコストの初期検討にも活用できます。
  • Unreal Engine連携センサモデルはUnreal Engine上のより詳細な3Dシーンから画像や点群データを得ることができます。認識モデルによる車両やレーンマーキングの検出が異なる照度条件や背景・障害物の有無において正しく行われているかの検証を実施できます。RoadRunnerで作成したシーンはFBX形式でエクスポートでき、Unreal Engine用の3Dシーンとしてもお使いいただけます。

図11. 確率的センサモデルのシミュレーション例

図12. Unreal Engine連携センサモデル

車両モデル

クローズドループなシミュレーションを行うためには車両モデルも必須になります。一方で車両モデルの準備に悩まれるケースも多く見られます。単純なモデルから詳細なモデルまでシミュレーションの用途に応じて求められる表現度も異なります。Vehicle Dynamics Blockset™を組み合わせることで、二輪で表現した簡易的な車両モデルから6自由度の詳細な車両モデルまでを表現できます。リファレンスとなる車両モデルも提供しており、シミュレーションに必要な車両モデルをすぐに準備できます。システムの初期検討では簡易的なモデルを使うことで手早く環境を準備できますし、詳細な車両モデルを使った場合は車両ダイナミクスが及ぼすセンサ検出への影響も考慮することができまます。提供するリファレンスモデルは中身を詳細にカスタマイズすることも可能です。Powertrain Blocksetではエンジン、トラクションモーター、バッテリー、トランスミッション、タイヤ等のコンポーネントライブラリを提供しています。車両のパワートレインに関する構成やパラメータを変更することができ、車両重量やブレーキ性能の違いを考慮したバリエーションをシミュレーションすることも可能です。

Vehicle Dynamics Blocksetの車両モデルのブロック図。レーンチェンジシナリオの参照パスや速度の生成、ドライバーモデル、コントローラー、環境モデル、ダイナミクスを考慮したモデル、可視化の各ブロックが結線され、車両ダイナミクを考慮したシミュレーションの構成例を示している。各要素が連携し、車両の動きを可視化する流れが表現されている。

図13. Vehicle Dynamics Blocksetの車両モデル例

Powertrain Blocksetのリファレンスアプリケーション一覧を示す画像。従来型車両モデル、ハイブリッド車両モデル、電気自動車モデル、燃料電池車モデルなど多様な車両パワートレインの構成例をリファレンスの例題として提供している。ユーザーのやりたい事に合わせて近しいモデルを選んで使うことができる。

図14. Powertrain Blocksetのリファレンスアプリケーション

結果の自動評価およびレポート生成

シミュレーションの実行環境が整った後は、準備したEuro NCAPシナリオを使い机上で網羅的な試験を実施します。ここでの課題は、大規模なシミュレーションの実行と結果の管理・解析の効率化です。

Simulink Test™を活用することで、Euro NCAPのシミュレーションの実行と結果のレポート生成、スコア付けを自動化することができます。ユーザーはシミュレーション結果の一覧を確認しながら、問題のあったケースの特定と再現・解析を容易に行うことができます。ユーザー独自の評価指標や許容誤差の設定も可能です。

図15. Simulink Testによるシミュレーション実行と結果のレポート生成

実践的な例題とドキュメント

Automated Driving Toolbox Test Suite for Euro NCAP ProtocolsサポートパッケージにはAEBを対象にした上記ワークフローの例題と詳細なドキュメントも準備されています。例題はお手元ですぐに実行でき、構築すべき環境のイメージを明確化と準備すべきコンポーネントの特定を助けます。


参考: 自動運転システム, Automated Driving Toolbox, RoadRunner, Vehicle Dynamics Blockset, ADAS (先進運転支援システム)